アニメや実写化もされた「サクラダリセット」心情や風景の描写まできれいな物語でした

サクラダリセットは、特殊能力が存在する町を舞台にした物語です。けれど戦闘ものではありません。
強固な記憶力や声を届ける能力、動物と会話できる能力など”ある願いを叶えたくて”発現したとても限定的な能力を持つ人々の物語です。
まず、様々な人の願いが織り成す物語というのが美しく、また、人間のエゴや繊細さも合わさって非常に深みのあるものでした。

物語は、ひとつの大きな謎を主軸として進んでいきます。それは、未来視の能力を持つ相麻菫が、なぜ事故で死んでしまったのか。
謎は彼女の死から、町の成り立ちにまで及んで行きます。
現代ファンタジーとミステリー、そして青春ものやヒューマンドラマが混ざったこの物語は、一貫して豊かな心理・風景描写によって綴られています。

人によっては風景の描写がくどいように感じるようですが、脳内で風景を思い浮かべながら読むタイプの人には非常に美しい景色を見せてくれると思います。

また、心を打つ心理描写は、主人公と敵対することになる人物も含め一人一人に過去や信念があるのだと感じることができます。

題名にもある「リセット」の能力は過去をやり直すことのできるものですが、最終話を読み終えた後はこれから先の未来について考えたくなるような、美しくメッセージ性のある物語です。